ダイレクトボンディングとは?メリット・デメリット・費用など徹底解説

「ダイレクトボンディングって何?」「すきっ歯も治せるの?」「保険の詰め物とはどう違うの?」。このような疑問はありませんか?
ダイレクトボンディングは、歯にレジンを詰めて見た目を整える治療法です。セラミックと違い、型取り不要で削る量も少なく、虫歯やすきっ歯、欠けた歯など幅広く対応できます。
本記事では TOTAL TOOTH TREATMENTの井上慎太郎先生監修のもと、ダイレクトボンディング治療の流れや適応症例、メリット・デメリット、費用まで詳しく解説。
後悔しない治療選びのために、まずは正しく知ることから始めましょう。
井上 慎太郎
日本大学歯学部卒業後、大学付属歯科病院 歯内療法科・インプラント科にて勤務。2012年 大阪市淀川区に井上歯科CLINIC&WORKS OSAKA 十三、2017年 港区新橋に井上歯科CLINIC&WORKS TOKYO 、2018年 中央区八丁堀にTOOTH CREATE TOKYO、2024年 港区赤坂にTOTAL TOOTH TREATMENTを開院し現在4クリニックを経営している。
目次
- ダイレクトボンディングとは
- ダイレクトボンディングで対応できる症例
- 虫歯治療
- 歯の隙間の改善
- 欠けた歯の修復
- 虫歯の治療跡に詰める
- 歯の形状を整える
- ダイレクトボンディングと他の治療法との違い
- セラミック治療との違い
- ラミネートベニアとの違い
- コンポジットレジン(CR)との違い
- 矯正治療(マウスピース矯正)との違い
- ダイレクトボンディングの費用
- ダイレクトボンディングのメリット
- 費用が安い
- 見た目が自然
- 治療期間が短い
- 歯を削る量が少ない
- ダイレクトボンディングのデメリット
- 寿命がある
- 適応できない症例がある
- ドクターの技量が必要
- ダイレクトボンディングで後悔しやすいケース
- 適応外なのに無理に治療した
- 変色・やり直しの可能性を知らなかった
- 仕上がりに不満を感じた
- 費用に納得できないまま治療を受けた
- ダイレクトボンディングの治療手順
- ①検査・診断・カウンセリング
- ②歯のクリーニング
- ③ボンディング材と充填剤の塗布と形成
- ④硬化
- ⑤仕上げ
- ダイレクトボンディングを検討する際の注意点
- 対応 できる歯科クリニックは限られている
- 治療後のメンテナンスが必要
- 歯科クリニックによって使用する材料が異なる
- ダイレクトボンディングに関するQ&A
- ダイレクトボンディングとセラミック治療はどちらがいいですか?
- ダイレクトボンディングは保険が適用されますか?
- ダイレクトボンディングの材料は安全ですか?
- ダイレクトボンディングとホワイトニングは同時に行えますか?
- ダイレクトボンディングの治療は痛いですか?
- ダイレクトボンディングの特徴を知って納得できる選択を

ダイレクトボンディングは、歯の色や形を自然に整えるための審美治療のひとつです。
すきっ歯や欠けた歯の修復、虫歯治療のあとの詰め物などに用いられ、見た目と機能の両方を回復できます。
治療では「ハイブリッドセラミック」と呼ばれる、レジンとセラミックを混ぜた充填剤を歯に直接塗布・成形し、光で硬化させます。
型取りや被せ物の作製が不要で、1日で治療が完了するケースもあるのが特徴です。
また、セラミックに比べて価格が比較的抑えられており、短期間・低コストで自然な見た目を目指せる治療として注目されています。

ダイレクトボンディングは、すべての審美治療に適応できるわけではなく、一部の治療に限られます。ダイレクトボンディングが適している症例をみていきましょう。
虫歯治療
ダイレクトボンディングは、虫歯治療で用いることが可能です。
虫歯治療で削った部分にレジンとセラミック粒子を混合した材料を埋めることで、天然歯の色合いや透明感を再現できます。
修復後の歯が自然に見えるため、見た目を重視している方に適した治療方法と言えるでしょう。
歯の隙間の改善
すきっ歯など、歯と歯の間に隙間がある場合、ダイレクトボンディングでその隙間を埋められます。
前歯のすきっ歯は歯科矯正(部分矯正)でも歯並びを整えることも可能ですが、費用が高く、時間も必要です。
前歯以外の歯並びに問題がない場合は、ダイレクトボンディングで前歯のすきっ歯を改善することも選択肢の一つです。
欠けた歯の修復
転倒などの不慮の事故や、過去に治療した歯の経年劣化で、歯が欠けてしまった場合にもダイレクトボンディングで治療できます。
特に前歯の場合は見た目に影響があるので、早く治したいですよね。
ダイレクトボンディングであれば、短い通院日数で自然な歯の再現が可能です。
虫歯の治療跡に詰める
虫歯を治療した場合、虫歯だった部分を削り取った跡に詰め物や被せ物をするケースが多いです。
保険適用になる銀歯を使われる方も多いですが、銀歯は笑った時や大きく口を開けた時に目立ちがちなので気になる方もいるでしょう。
銀歯の代わりにダイレクトボンディングを使用すれば、虫歯の治療跡を目立たせず、自然な歯に見えるように修復できます。
ただし、銀歯が大きく両方の隣接と接している場合は、強度 が不足するためダイレクトボンディングは適用外になります。
歯の形状を整える
歯の形状の悩みにも、ダイレクトボンディングを用いて自然に歯の形を修正できます。
たとえば、歯ぎしりで犬歯が摩耗してしまった、歯の先がギザギザしている、大きさが揃っていない小さい歯があるなどの悩みがある場合などです。
ただし、治療した歯は、従来の歯と同じまたは大きくなります。歯を小さくすることはできないため注意しましょう。

見た目や機能を整える歯科治療には、さまざまな選択肢があります。
ここでは、ダイレクトボンディングとよく比較される4つの治療法の特徴と違いを見ていきましょう。
セラミック治療との違い
セラミック治療は、白く美しい被せ物や詰め物を作製して装着する方法です。
色調や耐久性に優れていますが、歯を大きく削る必要があることや費用が高額になりやすい点がデメリットです。
一方、ダイレクトボンディングは削る量が少なく、1回の通院で終わることも多いため、より気軽に受けられます。
ラミネートベニアとの違い
ラミネートベニアは、歯の表面を薄く削り、セラミック製のシェルを貼りつける審美治療です。
自然な仕上がりと色もちの良さが魅力ですが、一度削った歯は元に戻せません。
ダイレクトボンディングは元の歯をほとんど削らずに済むため、将来的な負担を減らしたい方に向いています。
コンポジットレジン(CR)との違い
保険診療で使われるCR(コンポジットレジン)も、虫歯治療や小さな補修に使われます。
ただし、保険適用のCRは色や質感の再現性が限られており、変色しやすいという欠点があります。
ダイレクトボンディングは審美性に優れた素材を使い、見た目を細かく調整できる点が大きな違いです。
矯正治療(マウスピース矯正)との違い
すきっ歯のような歯並びの乱れを改善したい場合、矯正治療という選択肢もあります。
歯そのものを動かして根本から整えるため、噛み合わせなどの機能面でも改善が期待できるのが矯正のメリットです。
ただし、治療には数ヶ月〜1年以上の期間がかかることもあります。
一方、ダイレクトボンディングは、軽度のすき間や歯の形を短期間で整えたい方に適した治療法です。
「どちらが合っているか分からない」という方は、無料診断で自分の状態をチェックしてみると良いでしょう。

ダイレクトボンディングは、保険適用外の自由診療になります。治療相場は1本あたり2万〜5万円程度です。
たとえば、前歯2本のすきっ歯を治療する場合、総額は4万円〜10万円程度かかることになります。
歯科矯正では部分矯正の場合でも10万円〜70万円ほどかかることになりますので、比較的良心的な価格と言えるでしょう。

ダイレクトボンディングにはいくつかの特徴があります。まずはメリットからみていきましょう。
費用が安い
ダイレクトボンディングは、1本あたり2万〜5万円と比較的安価な価格で治療が可能です。
保険は適用できませんが、それでもセラミック治療や歯科矯正などほかの自由診療と比べると、良心的な価格設定が特徴です。
見た目が自然
ダイレクトボンディングでは、ほかの歯に合わせた色調にすることが可能です。適度な透明感もあるため、ほかの歯と比較しても浮かずに自然な仕上がりになります。
銀歯だった箇所をダイレクトボンディングで白い歯にする場合はもちろん、前歯を治療する場合も、治療した箇所がほとんどわからないほどの見た目になるでしょう。
治療期間が短い
ダイレクトボンディングの治療は、1回で終わるのが大きなメリットです。たとえば、すきっ歯の改善を歯科矯正で行おうとすると数ヶ月はかかります。
その点、ダイレクトボンディングであれば短期間で改善が見込めるので、メリットを感じやすくなるでしょう。
ただし、治療時間は1本あたり1時間以上かかることがあります。なぜなら治療の精度を高めるために「ラバーダム」と呼ばれるゴムのマスクをして、患部に唾液が入らないように慎重に処置を行うからです。
そのため、本数が多い場合は複数回にわけることもあります。
ダイレクトボンディングの予後の確認や微調整などを行うために、後日通院が必要になる場合もありますので、最大3回程度は通うつもりで考えておくとよいでしょう。
歯を削る量が少ない
ダイレクトボンディングは、ほかの治療法と比較して歯を削る量が最小限で済むのもメリットです。
詰め物やセラミック治療の場合は、接着の強度を高めるために歯を削ってから接着させますが、ダイレクトボンディングの場合は直接歯に充填剤を入れて固めるため、歯を削る必要がほとんどありません 。
また、虫歯治療で削る際は「MI:Minimal intervation(最小限の侵襲)」にもとづいて治療を行うため、歯を削る量が少なくて済みます。

続いて、「寿命がある」「適応できない症例がある」など、ダイレクトボンディングのデメリットを紹介します。デメリットを理解した上で治療法を選択しましょう。
寿命がある
ダイレクトボンディングは、セラミックが配合されているため耐久性に優れていますが、それでも永久的なものではありません。
ダイレクトボンディングの寿命は、保険適用のプラスチックレジンの寿命(2年〜3年)に比べると比較的長いですが、4年〜6年程度で劣化するといわれています。
もちろん個人差がありますので、10年以上持つこともありますが、変色したり、摩耗してしまう可能性があることは理解しておきましょう。
ダイレクトボンディングで治療した歯を長くきれいに保つためには、定期的にメンテナンスを行うことが大切です。
かみ合わせや飲食物の嗜好など口腔内環境により個人差はありますが、6ヶ月~1年に1回くらいの頻度で定期健診を受けるとよいでしょう。
適応できない症例がある
ダイレクトボンディングは、比較的小さい箇所や噛んでも力が加わりにくい歯の治療に向いています。
そのため以下の症例は、セラミック治療や歯科矯正を検討するか、ドクターに相談して治療方針を決めるようにしましょう。
奥歯や広範囲の治療となる場合
虫歯などで広範囲にわたり歯の体積を失った場合
前歯の先端が大きく欠けている場合
すきっ歯の隙間が大きすぎる場合
ドクターの技量が必要
ダイレクトボンディングは、歯に直接レジンを盛りつけて形を整える、繊細な手作業が求められる治療法です。
色の選択や形成の精度、仕上がりの美しさは、歯科医師の経験や技術力に大きく左右されます。
そのため、価格の安さだけで選ぶのではなく、症例実績や治療後の写真を確認したうえで、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要。
また、すべての歯科クリニックで対応している治療ではないため、事前に確認しておくと安心です。
仕上がりの美しさや手軽さが魅力のダイレクトボンディングですが、治療後に「思っていたのと違った…」と後悔するケースも。
ここでは、実際によくある後悔のパターンと、その理由について解説 します。
適応外なのに無理に治療した
ダイレクトボンディングは、前歯のすきっ歯や小さな欠けの修復など、限定された症例に適した治療です。
奥歯や広範囲にわたる欠損など、適応外の部位に無理に行うと、破折や脱離などのトラブルが起きやすくなります。
治療前には、歯科医師の診断を受けて「本当にこの治療法が合っているか」を確認することが大切です。
変色・やり直しの可能性を知らなかった
使用する素材は、時間の経過とともに多少の変色や摩耗が起きることがあります。
とくに色味にこだわりたい人や、長期的な審美性を重視する人にとっては、事前にそれを知らずに治療すると後悔につながりやすいポイントです。
変色が気になる場合は、数年ごとにやり直しを検討することもあります。
治療前に「どれくらいもつのか」「再治療は可能か」といった寿命の目安を聞いておきましょう。
仕上がりに不満を感じた
ダイレクトボンディングは、歯科医師が手作業で色や形を調整する技術の差が出やすい治療です。
理想としていた見た目と違っていた、左右差が気になるなどの理由で不満を感じるケースもあります。
医院を選ぶ際には、症例写真や口コミを確認するなど、仕上がりのクオリティに納得できるかどうかを事前にチェックしておくと安心です。
費用に納得できないまま治療を受けた
保険適用される治療と比べると、ダイレクトボンディングは自由診療となるケースが多く、費用に差が出やすいのも特徴です。
「簡単な治療に見えたのにこんなに高いとは思わなかった…」という声も少なくありません。
後悔を防ぐには、事前に費用の目安や内容をきちんと説明してもらうことが重要です。
不安な点は遠慮せずに相談しましょう。

ダイレクトボンディングはどのような順序で治療を行う のでしょうか?一般的な流れをみていきましょう。
①検査・診断・カウンセリング
ドクターが歯の状態を確認し、ダイレクトボンディングが適応できる症例か確認します。
ほかの治療法と組み合わせたりする場合は、歯型を取ってシミュレーションを行うことも。
治療内容やメリット・デメリットなど知りたいことなどあれば、カウンセリングの段階で聞いておきましょう。
②歯のクリーニング
ダイレクトボン ディングを行う前に、歯のクリーニングを行うのが一般的です。
歯に汚れがついたままだと、ボンディング材(接着材)の効果が弱くなってしまうため、事前のクリーニングで治療後の持ちをよくします。
また、クリーニングでお口の中の細菌量を減らすことで、再び虫歯になるのを予防できます。
③ボンディング材と充填剤の塗布と形成
ボンディング材を歯の表面に塗布し、光を照射。次にセラミックとレジンを混合した充填剤を詰めて、歯の形状や色調を調整します。
④硬化
充填材が適切に形成されたら、特殊な光を使用して硬化させ、強度を高めます。
⑤仕上げ
硬化が終わったら、歯の形状を最終的に調整します。必要に応じて磨きをかけて、ほかの歯との色合いを見て自然な光沢を出します。
クリニックによっては1回ですべての工程を行う場合もありますが、カウンセリングに時間をかけて行うために、治療の日をわけているクリニックも多いです。
治療を急ぐ場合やカウンセリングと治療を同日に行いたい場合は、あらかじめ歯科クリニックの方針を確認しておくとよいですね。

ダイレクトボンディングで後悔しないためにも、治療を検討する際は以下の点を押さえておきましょう。
対応できる歯科クリニックは限られている
ダイレクトボンディングは歯科医師の技術が求められることに加えて、さまざまな色調に対応した充填剤や、感染予防対策のための道具など揃えなければなりません。
一つひとつが高価になることから歯科医院における導入のハードルが高いため、ダイレクトボンディングを行っていないところもあります。
ダイレクトボンディングを検討する際は、治療を実施しているか調べ、治療経験のある歯科医師が在籍しているかどうか確認しましょう。
治療後のメンテナンスが必要
ダイレクトボンディングを詰めたばかりのときは、天然歯と馴染み、見た目も美しいです。
しかし、プラスチックが混ざっているため着色はどうしても避けられず、長持ちさせるためには定期メンテナンスを受けましょう。
お口の状態によって異なりますが、3~6ヶ月を目安に定期メンテナンスを受けることをおすすめします。
歯科クリニックによって使用する材料が異なる
使用する材料には「エステライトアステリア」「グラディアダイレクト」「プレミス」といった種類があり、それぞれ質感や光沢が異なります。
もし複数の歯を治療する場合は、同じクリニックで一貫した治療を受けることをおすすめします。

最後に、ダイレクトボンディングに関するよくある質問をまとめてみました。セラミック治療との比較、治療の痛みなど気になる疑問を解決しておきましょう。
ダイレクトボンディングとセラミック治療はどちらがいいですか?
どちらがいいかはそれぞれの特徴を理解し、適応症例や審美性、機能性、予算などを考慮した上で決めるのが望ましいです。
セラミック治療は、ダイレクトボンディングと比べて劣化に強く、変色や汚れがほとんどありませんが、広い範囲の歯を削る必要があります。
また、費用相場もセラミック治療の方が高くなるため、セラミック治療に興味がある場合は一度歯科クリニックで相談してみましょう。
