なぜマウスピース矯正で集団訴訟が起こったのか?トラブルに巻き込まれないための注意点
「マウスピース矯正の集団訴訟はどうして起きたの?」
「マウスピース矯正を試したいけど、トラブルに巻き込まれないか心配」
このようにマウスピース矯正に対して、戸惑いや不安を感じていませんか?
そこで本記事では、2023年に起きたマウスピース矯正の集団訴訟の原因や、トラブル回避のためのポイントを解説します。
トラブルが心配でマウスピース矯正に踏み切れない方は、ぜひ参考にして不安を解消してくださいね。
木村真由美
Oh my teethでのマウスピース矯正を経て、2021年6月に株式会社Oh my teethにジョイン。マウスピース矯正経験者としてOh my teethのオウンドメディア「歯科矯正ブログ」にて記事を更新中。ミッションは「歯並びに悩むすべての方に歯科矯正の確かな情報をお届けすること」。
目次
- マウスピース矯正で集団訴訟が起こったのはなぜ?
- 請求総額4.6億円に及んだマウスピース矯正の集団訴訟
- 集団訴訟の原因①【返金前に閉院】
- 集団訴訟の原因②【健康被害】
- マウスピース矯正は訴訟が起こるほど危険なものなの?
- そもそもマウスピース矯正は対応症例が限られる
- 症例によってはマウスピース矯正で多くのメリットが得られる
- ワイヤー・マウスピースに限らず、甘い誘い文句には気をつけよう
- マウスピース矯正でトラブルに巻き込まれないための注意点
- 歯科矯正は慎重にクリニックを選ぶ
- マウスピース矯正の正しい知識を身に着ける
- 経験者やセカンドオピニオンを聞く
- デンタルローンを組むときは契約内容を理解しておく
- 万が一、マウスピース矯正でトラブルに巻き込まれたら
- セカンドオピニオンを受ける
- 消費者向けの無料相談窓口を利用する
- 医療ADRに相談する
- マウスピース矯正はクリニック選びと情報収集がトラブル回避のカギ
ここでは、マウスピース矯正の集団訴訟の概要や、訴訟となった原因について探っていきます。
この集団訴訟は何が問題だったのか、一緒に確認していきましょう。
請求総額4.6億円に及んだマウスピース矯正の集団訴訟
2023年の1月および6月、合計312人のマウスピース矯正患者が医療法人「デンタルオフィスX」を相手に、総額4億5900万円の損害賠償を求め集団訴訟を起こしました。
集団訴訟の概要は次の通りです。
「被告会社がモニターになれば実質無料でマウスピース矯正ができる」と勧誘・募集していた
原告側の患者は、相場よりも高額な矯正費用を支払わされた
矯正が始まるとモニター報酬の支払いが滞るようになり、全額返金されなかった
クリニックが突然閉鎖され治療を続けられなくなった
マウスピース矯正患者のローン支払いだけが残ってしまった
なお、訴訟問題については日本矯正歯科学会からも注意喚起が出されています。
参考: 2023年1月26日に報道された患者による集団訴訟に対する注意喚起|公益社団法人 日本矯正歯科学会
集団訴訟の原因①【返金前に閉院】
マウスピース矯正の集団訴訟では、「矯正モニターとして治療すると治療費が毎月報酬として 返金される」という契約がクリニックと患者の間で交わされました。
しかし、ふたを開けてみると治療費が全額返金されることはなく、クリニックも突如として閉鎖されてしまいます。
被害者側には高額なローンの支払いだけが残り、最終的に訴訟へと発展しました。被害にあわないためにも、実質無料といった過剰な値引きに惑わされないことが大切です。
歯科矯正モニターに関するトラブルは、以下の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。
歯科矯正モニターはどれくらいお得?トラブル回避のポイント・注意点を解説
集団訴訟の原因②【健康被害】
クリニックが突然閉院した結果、被害者には金銭的な損害だけでなく健康被害も生じていると報じられています。
健康被害につながった原因は、矯正治療を中断したことで噛み合わせが悪くなったり歯並びが悪化したりしたためです。
噛み合わせや歯並びが悪化すると顎に負担がかかり、肩こりや頭痛などを引き起こす原因になりえます。そうなれば結果として健康に悪影響を与え、日常生活にも支障が出てしま う可能性もゼロではありません。
【歯科医師監修】歯科矯正を途中でやめるのは危険?デメリットや避ける方法を紹介
マウスピース矯正もワイヤー矯正と同様に、適切な計画に基づいて治療を行えば歯並びの改善が期待できます。ただ、マウスピース矯正は比較的新しい治療法なので、情報不足や訴訟問題のイメージから、治療に不安を感じる人は少なくありません。
そこでここでは、マウスピース矯正の強みや弱点を紹介しながら、マウスピース矯正に関する理解を深めていきましょう。
そもそもマウスピース矯正は対応症例が限られる
マウスピース矯正はすべての歯並びに適しているわけではなく、対応症例が限られています。マウスピース矯正は「ひねる」「回転させる」「大きく平行移動させる」といった歯の動かし方が苦手です。
下記の症例などにあてはまる場合は、マウスピース矯正で治療を受けられないこともあります。
抜歯が必要な場合
重度の歯のガタつき
骨格的な問題
マウスピース矯正に適合しない症例の人が無理に治療を進めても、正しい治療効果を得られません。そのため一般的にマウスピース矯正を行う前には、適性診断を行い一人ひとりに合った治療計画が立てられます。
マウスピース矯正に適合するかは自己判断できないため、まずはクリニックで診断を受けてみましょう。
マウスピース矯正の Oh my teeth では、矯正前診断やカウンセリングも無料で実施しています。「マウスピース矯正で治療できるかだけでも知りたい」という方も、お気軽にお越しください。
症例によってはマウスピース矯正で多くのメリットが得られる
マウスピース矯正には、次のような特徴があります。
目立たない
比較的痛みが少ない(※痛みの感じ方には個人差があります)
取り外しができるため食事に制限がなく、歯磨きしやすい
金属アレルギーでも治療できる
通院回数が少ない
同時にホワイトニングもできる(※アタッチメントがついていない場合)
マウスピース矯正は、矯正器具が目立たず私生活にも影響が出にくい優れた矯正方法です。ただし、理想の歯並びへと導くためには自己管理が必要になります。
たとえば、「マウスピースを1日20時間以上装着する」「チューイーを1日30分以上噛む」「マウスピース装着時は水以外の飲食はNG」などの決まりを守らなくてはいけません。
こうした自己管理を怠ると計画通りに歯が動かず、結果として治療期間が伸びたり理想の歯並びにならなくなったりします。このようにマウスピース矯正中は制約が多く、自己管理が苦手な方には向いていない矯正方法といえるでしょう。
一方で、「自己管理は得意」「歯並び改善への思いが強い」という方には、マウスピース矯正は多くのメリットを得られる治療法だといえます。
ワイヤー・マウスピースに限らず、甘い誘い文句には気をつけよう
歯科矯正を契約する際には「全額返金」「実質無料」などの過剰な値引きには、注 意しましょう。甘い誘い文句には安易に飛びつかないよう、冷静に対応することが大切です。
もちろん、すべてのモニター制度が悪いわけではなく、矯正費用の負担を軽くしたい方にはとても魅力的な制度です。
もしモニター制度を利用する際には、次の点についても確認してください。
詳しい治療内容を確認する
返金に関する規定を理解する
モニターになるための条件を理解する
名前や顔写真の公開有無を確認する
マウスピース矯正でトラブルに巻き込まれないようにするためには、次の点に注意して進めていきましょう。
歯科矯正は慎重にクリニックを選ぶ
マウスピース矯正の正しい知識を身に着ける
経験者やセカンドオピニオンを聞く
デンタルローンを組むときは契約 内容を理解しておく
歯科矯正は慎重にクリニックを選ぶ
歯科矯正をする際は、クリニック選びが非常に重要。マウスピース矯正の治療には専門知識や高度な技術が必要なため、実績や症例数の多い歯科医師のほうが望ましいです。
またカウンセリング時に自分の歯並びに近い症例を見せてくれるなど、親身に寄り添ってくれる歯科医師が在籍しているかも確認してください。
歯科医師とのすり合わせ不足は、「目指したい歯並びのイメージが違う」「矯正中の悩みを相談できずに挫折する」などにつながりかねません。
あなたに合ったクリニックを選ぶために、最低でも2〜3つのクリニックでカウンセリングを受けるようにしましょう。
カウンセリングでは次の項目に注目して、自分に合ったクリニックを探すのがポイントです。
メリットだけでなくデメリットやリスクに関しての説明があるか
求める仕上がりに合った治療方針を提案してくれるか
理想の治療ゴールをドクターとすり合わせられるか
サポート体制は整っているか
明瞭な料金システムであるか
自分に合った支払い方法があるか
自分とクリニック・ドクターの相性は合っているか
マウスピ ース矯正をはじめる前にはカウンセリングを受けて、実際に自分の目で担当医師やクリニックの雰囲気を確認したうえで契約しましょう。
マウスピース矯正 Oh my teethは、カウンセリングや治療前診断も無料で実施しています。「カウンセリングだけでも受けてみたい」という方も、ぜひお気軽にご予約ください。
Oh my teethの無料診断から矯正開始までの3ステップを解説
マウスピース矯正の正しい知識を身に着ける
情報の正誤を判断するためには、マウスピース矯正の知識を事前に身に着けておかなければなりません。
ドクターの話やセールストークを鵜呑みにした結果「こんなはずじゃなかった」と後悔し、トラブルにつながるケースも散見されます。
下記にあげる点は、マウスピース矯正の最低限の知識として身に着けておきたい項目です。
マウスピース矯正のメリット・デメリットを理解する
部分矯正と全体矯正の違いを理解する
抜歯や研磨処置(IPR)の必要性を理解する
マウスピース矯正の費用相場を知る
治療期間の目安を把握する
保定期間が必要なことを理解する
カウンセリングの際には受け身ではなく、自分から積極的に質問し疑問点をクリアにする姿勢も大切です。
経験者やセカンドオピニオンを聞く
「歯並びの矯正になかなか踏み切れない」という方は、矯正経験者に話を聞くのもおすすめです。治療の流れや痛みなどについて、具体的な情報を得られるでしょう。
また、既にマウスピース矯正をはじめていて主治医の治療方針に疑問を感じている方は、セカンドオピニオンを受けることも考えてみましょう。第三者の意見を踏まえて違った角度から治療方針を検討でき、治療の選択肢の幅も広がります。
セカンドオピニオンの進め方については、次のセクションで詳しく解説しますのでそちらを参考にしてください。
デンタルローンを組むときは契約内容を理解しておく
デンタルローンとは、歯科治療に特化したローンのことです。自由診療で高額になる歯科矯正やインプラント、ホワイトニングなどが対象になります。
デンタルローンのメリットとデメリットは次の通りです。
デンタルローンのメリット | デンタルローンのデメリット |
---|---|
・手元に資金がなくても治療をスタートできる ・月々の支払額が低く負担が少ない ・金利が5%前後と低い | ・利用するには審査がある ・利息がつくため一括払いより高くなる ・支払い義務が長期に渡る |
デンタルローンを組む際には、契約内容をしっかり理解しておきましょう。特に治療中断やクリニック閉鎖などの条項は、トラブル回避のためにも必ずチェックしておきたいポイントです。
しかし、デンタルローンで支払った後の中途解約は、ローンを組んだ信販会社や金融機関を含めての協議となります。そのため、自己都合のローンの中途解約は原則できないことを覚えておきましょう。
ここでは、マウスピース矯正でトラブルに巻き込まれたときの対処法を3つ紹介します。無料で利用できる相談窓口などもありますので、参考にしてください。
セカンドオピニオンを受ける
消費者向けの無料相談窓口を利用する
医療ADRに相談する
セカンドオピニオンを受ける
何かトラブルが起きた場合には、まずは主治医に相談するのが前提です。しかし、途中でドクターの治療方針に納得できなくなるケースや、親身に対応してもらえず不信感が出てくることも考えられます。
こうしたケースでは、セカンドオピニオンを検討してもいいでしょう。セカンドオピニオンを受ける場合は、次のような流れで進めていくのが一般的です。
主治医にセカンドオピニオンを受けたい旨を伝える
主治医から紹介状や資料(治療経過資料・口腔内写真・レントゲン写真など)を受け取る
セカンドオピニオンを受けたいクリニックに連絡を取り、資料を持参して受診する
前の治療に対するセカンドオピニオンを文書で受け取り、主治医にその見解を伝える
主治医と相談のうえ、転院を希望するときは紹介状を書いてもらい、転院手続きを進める
主治医の資料作成費用やセカンドオピニオンには、それぞれ1〜3万円ほどの費用がかかることを念頭に置いておきましょう。
また「セカンドオピニオン可」「転院可」としているクリニックでも、それまでの治療内容や歯の状態によっては受け入れてもらえないこともあります。まずは、転院を希望するクリニックでカウンセリングや検査を受けて、転院の受け入れについて打診してみましょう。
消費者向けの無料相談窓口を利用する
マウスピース矯正の治療でトラブルが起きたときには、相談窓口を利用するのも方法の一つです。相談窓口をご紹介しますので、困った際にはぜひ参考にしてください。
相談窓口 | 概要 | 連絡先 |
---|---|---|
消費者庁 | 全国共通の電話番号から身近な消費生活相談窓口を案内してくれます | TEL:188 |
国民生活センター | 消費生活全般に関する苦情や問い合わせなど、専門の相談員が公正な立場で処理に当たっています | |
医療安全支援センター | 医療に関する苦情・心配や相談に対応しています | |
公益社団法人 | 歯科矯正の疑問について、メールで質問を受け付けています | |
公益社団法人 | 歯科矯正の悩みやトラブルに関して相談できます。しかし、個別の示談や訴訟、賠償等の相談は受け付けていません |
上記の相談窓口は無料で利用できます。しかし回答に時間がかかることがあるため、お急ぎの方は注意が必要です。
医療ADRに相談する
医療ADRとは、医療機関と患者間のトラブルを第三者の仲介で解決する制度のことです。被害者と医療関係者の間には医療紛争において経験豊富な弁護士が入り、公平な判断が得られます。
長期に渡る裁判よりも迅速に、かつ低コストで解決できるのが大きなメリットです。医療ADR所在地一覧は、日本弁護士連合会ホームページのこちらをご覧になってください。
費用に関しては、申立手数料(11,000円)・期日手数料(5,500円)・成立手数料(解決額に応じた額)がかかります。詳しい成立手数料などは、東京弁護士会ホームページのこちらからも確認できますので、参考にしてください。